2012年8月1日水曜日

AGP 第9号

AGP日本語通信 9号 (2012年8月号)


<インド文化講座・2>

インド家族と結婚事情
アラティ・ゴパラクリシュナ

ジョイントファミリーとは
 皆様もご存知の通り、インドでよく見られる家族の形態はジョイントファミリーと呼ばれます。では、ジョイントファミリーとは何でしょうか。
 インドでは、昔から男子は結婚後も実家にとどまり、妻と子供も含めて同じ家で暮らします。いっしょに食事をし、仕事をし、お祈りしたりするだけではなく、社会や経済的なことにもお互いに協力し活動します。昔からこのような大家族で生活してきました。
 このような伝統的な家族の形態は、今はどうなっているのでしょうか。インドの67%の農民たちは今も同じような生活をしています。
 それに、インドの大金持ちで、大企業を経営しているタタ、ビルラなどの人たちも大家族で生活をしつつ、経済的な面でお互いに援助や協力をしています。

  
 しかし、都会に住んでいる中流階級の人たちでは、すこしずつ家族の形態が変わってきています。多くの世代の人々が一緒に住むのが理想的ですが、会社や学校に遠くなる可能性もあり、大きな家を建てるのも難しいので、核家族になることもよくあります。日本と同じような核家族、つまり、両親と未婚の子供で家族が形成されているケースも少なくないです。けれども、親類のネットワークはいまだにとても強く、親戚(しんせき)や家族を第一に考えることが何よりも重要と言う価値観の中で、経済的にも助け合って生活しています。たとえば、私の場合、親が転勤で他の町に住んでいたので、兄とともに伯母の家で育てられました。
 何か重要なことを決めるとき、たとえば、子供をどんな学校に行かせるか、どんな勉強をさせたいか、どこで家を作ったらいいか、などのことを決めるときも、よく親族たちと話し合って決めるのが普通となっています。それで、結婚相手を決めるときも、同じようにお互いの親族の人に頼るのが普通です。みんなで話し合って相手を決めるこんな習慣が、お見合い結婚です。

結婚事情
 インドで今も大半となっている結婚方法、お見合い結婚を紹介したいと思います。適齢期(てきれいき)になると、親や親族が結婚相手を探し始めます。適齢といっても、都会では女性は20歳~25歳ぐらいで、男性は25歳~30歳ぐらいとなっています。
 結婚相手を探すためには、結婚する人の写真、履歴書と星座のチャートを作り、エンジニアがいいとか、外国で働いている人がいいなどの結婚条件を決め、以下の方法で結婚相手を探します。
 まず初めに、親類たちや知り合いの中で誰かその条件に合う人がいるか確認します。それから、お寺や知り合いの人に相手を探すように頼みます。もう一つの方法は仲人(なこうど)会社です。以前は、その家族を良く知る、顔が広い年上の女の人が仲人をやっていましたが、今は仲人会社が作られているので、履歴書を作成して、結婚条件も説明して頼むのが普通になっています。
 仲人会社の人たちは、多くの人の履歴書を持っていて、条件の合っているいくつかの人たちの履歴書や写真、星座のチャートを見せてくれます。家の人は星座のチャートがマッチし、自分の条件にあった人に連絡し、家族と一緒に会って、結婚する人だけではなく、家族みんなで相談して結婚相手を決めます。
 新聞で広告を出すことやインターネットの結婚サイトで相手を探すこともよくします。
 星座は、子供が生まれてた時の天体と星座の位置によって書かれます。これを見て専門家が人の未来を予想することができると信じられています。何かの行事、たとえば、家に入るセレモニーや結婚式をやるとき、そのチャートを見て日を決めるのが習慣です。結婚を決めるときも、男女二人のチャートを比較し、合っている場合だけ結婚することになっています。
 お嫁(よめ)さんは花婿(はなむこ)の家族といっしょに住むことになる場合が多いので、家族に合うお嫁さんを探すことが必要です。結婚後、お嫁さんは夫の家族と一緒に住んでいても、自分の家族や親族との結びつきも続けていきます。それに、何か行事がある場合は、お嫁さんの親類たちが呼ばれるのも珍しくありません。
 そんな関係になっているので、インドで結婚は男女の結びつきだけではなく、二つの家族の結びつきだと思われています。
 恋愛結婚は、他の国と同じように男女二人が愛しあって結婚することです。でも、インドでは自分の息子や娘に結婚相手を探すことと決めることを自分の責任と権利だと考えている親たちが多くて、恋愛結婚をした場合は親がその権利をなくしたように考えるので、あまり恋愛結婚を認めません。それでも恋愛結婚を希望する場合、それぞれの親や親類たちに事情を伝えて、両親に認めてもらうことになります。両親に認めてもらえなかった場合、意見を変えて両親の決めた人に結婚する人もいます。
 両親に認めてもらえなくても結婚したいと思った場合は、法律上では、大人になっている人は自分で結婚相手を決める権利を持っているので、裁判で結婚することもできます。

Dowryについて(女子の赤ちゃんが少ない現状)
 持参金(ダウリー)とは結婚の時に花嫁の家族が花婿の家族にあげるお金や財産のことです。もともとこの習慣は、一部の州やカーストで、自分の娘が経済的に困ったときに使えるように、親がお金を出してくれたことから始まりました。その後、持参金を要求する家族が増えてきて、問題となりました。1961年に法律上に禁止されるようになりましたが、今も大きな社会問題の一つとなっています。持参金をもらえないため妻を殺す人もいれば、もう一回結婚する人もいます。
 こんな持参金を払うのは難しいので、妊娠(にんしん)しているときに性別を確認し、女の子の場合は生む前に子供を殺してしまう人達もいるので、男女比率が悪くなり、2011年の調査によると、1000人の男子に対して940人の女子という割合となっています。

離婚
 まず、ヒンドぅー教では結婚式を行った時点で結婚が成立しますので、法律上の登録はしないケースもあります。インドの離婚率は他の国と比べてとても少なく、1%ぐらいと言われています。その主な理由は、経済的な問題、離婚の制度についての無知などです。
 昔からインドでは、貞淑(ていしゅく)は女性の美徳(びとく)だと思われているので、離婚した女性にたいする社会のあつかいもあまりよくないです。都会ではあまり感じられませんが、村では住みにくくなる場合もよくあります。


日本とインドの絆(きずな)
センティル・ムルガン

 言葉が存在しなかったときに、人間と人間のあいだの関係や絆などはどうだったでしょうか。そして、絆ってどう意味だろう。友情、知りたいことを教えてもらうことや、したいことを手伝ってもらうなどのことではないか。私の考えでは、人としても国にとしても、やはり優しい気持ちをもつことだと思います。特に、完全に違う言葉や文化をもつ二つの国の間にある絆は、本当に素晴らしいものでしょうね。
 なぜこの国の間の絆がそんなに必要なのかを深く考えると、もちろん皆様がご存知のように世界はどんどん小さくなってきているし、海外旅行も非常に盛んになって、人びとが世界のいろいろなところから旅行で別の国に行くことが増えてきましたね。そして海外貿易もすごく大きくなってきて、そのために海外出張に行く方も多いです。こんな状況だと、行った国でただ仕事だけして帰国する方は少ないかもしれません。なぜかというと、人生では、生きているうちにいろんなことを試してみたり、知らない国を探検することも必要だと思います。国際化の結果、最近貿易はさかんになって、その上、それぞれの国の経済が貿易している相手の国の経済に頼ることになるのは当然ですね。

 インドのバンガロールでは、今インドのいろんな所から仕事のために引越してきています。さらに、ただインド人だけではなく、多くの外国人も来て生活しています。特に、日本人です。トヨタなどの日本の自動車会社がこちらにできていることは、あるいはバンガロールのよい気候の結果かもしれません。こういった日本人とこちらにいるインド人が、いろいろことでいっしょに活動しています。それぞれの国の文化を交換するために、いくつかのイベントやプログラムがあります。この文では、日本とインドの絆を、バンガロールで行われていることをもとにして書きたいと思っています。
 「ハッバ」はカンナダ語で祭りと言う意味ですから、「ジャパンハッバ」というと日本祭りという意味です。7年前には、今みたいにこちらにいる日本人とインド人を繋げるためのもよおしがなにもありませんでした。それで、バンガロール大学で学生に日本語を教えていらっしゃった秦先生という方が、そのためになにかをしようと思って、ジャパンハッバを始めたそうです。ジャパンハッバの目的としては、ただ日本とインドの文化の交流をしてもらうことです。たとえば、日本人がインドの伝統的な歌を歌ったり、インド人が日本の伝統的な東京音頭などの歌で踊ったりしていました。少なくとも三百人くらいのお客様が来ていたそうです。こうして始まったジャパンハッバは非常に有名なイベントになり、最近バンガロールというとジャパンハッバ、というほどに有名になってきています。秦先生は、それぞれの国の代表的なものを加え、ジャパンハッバはもっとおもしろくなってきました。毎年来てくださっているお客さんも、日本のことを見て、「へえ、日本は素晴らしい国だな、どうしても一度行ってみたい」と感じます。その結果、そう思った人々は何回も日本に行くことになって、インドと日本のあいだの友情はもっともっと強くなってきています。そして、ある日本人は国に休みに帰ったとき、日本の家族にインドのことを話して、それを聞いて驚いた家族もインドを訪問しはじめて、インドの観光はさかんになったそうです。

 コミュニケーションとして言葉は必要ですね。それで、日本に行きたいとか日本語を勉強したいと思っている学生たちのために、インドではたくさんの大学や学で日本語を教えています。ただ日本語を教えるだけではなく、学生たちに日本の大学に留学に行くためにいろいろな準備もしてくれているそうです。日本では今若い人たちが少なくなってきているので、日本の政府も留学生のためにいくつかの奨学金を用意しています。その結果、最近日本に行っている留学生の人数は非常に多いです。国のあいだの友情を広げるために、留学生も大事です。
 同じように、日本からもたくさんの若い学生たちがインドに英語を勉強しに来ることが、インドのことを日本に伝えるいちばんいい手段になります。

 結論を言えば、日本とインドの絆は、それぞれの国の文化とか言葉とか貿易などに違いがあることの結果でしょう。違いが絆を生むのです。


今月の短歌
サクラ日本語リソースセンターの初級の生徒ラヴィクマルさん(40時間学習)はバンガロールについて1分で()こう書きました。
「バンガロールはきれいなまちです」
「バンガロールのてんきはすずしいです」
「きょうはあめではありません」
「バンガロールはかいしゃがたくさんあります」
「バンガロールはこうえんのまちです」

つまり、

 すずしくて きれいで かいしゃが いっぱいの こうえんのまち
  バンガロールは

ということですね。



MA Japanese Course. Centre for Global Languages, Bangalore University.
P.K. Block, Palace Road, Bangalore - 560009, India