AGP日本語通信 第5号 (2012年4月号増刊)
ついに増刊号まで出します。集まった原稿が多いので。今月から始まった「日本語によるインド文化講座」で、MA課程生がこのような話をしました。
インドの食生活
皆さんはインド人は毎日どんな食事をしていると思っていますか。
インドのレストランで有名な料理をいつも食べていると思っているのでしょうか。でも、そんな料理は私たちはたまにしか食べません。
日本人によく聞かれる質問、「インド人は毎日カレーを食べていますか」に対する答えとして、インドの食生活について説明させていただきます。
インドはとても広い国で、インド全体について話すことはできないので、南インドについて強調して話したいと思います。また、私たちはベジタリアンで、ベジタリアンのことしか話せません。
インドの地図を見てみましょう。南インドはケーララ、カルナータカ、タミルナードゥ、アンドラプラデーシュの四つの州です。これらの州に共通なものと特殊な料理について説明させていただきます。
まず、朝ごはんを見ましょう。朝ごはんの時間は家族によって違いますが、普通みんな7時から10時の間に朝ごはんを食べています。朝ごはんでよく作られる料理は、イドリー、ドーサ、ウプマなどです。カルナータカ州の特有の朝ごはんは、ラワイドリー、ラーギロティなどで、ケーララ特有のものは、アップン、イディヤップン、プテュなど、タミルナードゥはポンガルとイドリーです。週末や時間があるときにプーリーやワダなどを作って食べる人も多いです。
次は昼ごはん。昼ごはんも朝ごはんと同じように時間が違っていますが、多くの人が食べるのは1時から2時の間です。晩ごはんにも昼ごはんと同じようなものを食べます。晩ごはんの時間は普通8時から10時の間になっています。特別な日やお祭りの時はいろいろな種類のものを作って食べますが、うちで食べるときは、ごはんと一つのカレー、野菜と豆で作ったサンバルやラサムとヨーグルトライスを食べるのが普通になっています。でも、今は健康のことを考えて、ごはんの代わりにチャパティを食べる人も少なくないです。南インドのカレーというものは野菜炒めで、グレービみたいになっているものはありません。食事ごとに豆、野菜、お米や麦を使っているのは、たんぱく質、炭水化物、ミネラルとビタミンが全部入っているので、バランスが取れているといわれているからです。
インドは晩ごはんが遅いので、昼ごはんと晩ごはんの間に軽食を食べる人が多いです。軽食には果物が多いですが、最近はジャンクフードを食べる人も多くなっています。
(アラティ・ゴパラクリシュナ)
お祭りの昼食
次は、インドの食料品について説明させていただきます。CNN-IBNの調査によると、インドでは約40%がstrict vegetarianで、non vegetarianも、週に二三回しかお肉やお魚を食べない人が多いそうです。Vegetarian は牛乳はOKですが、お肉やお魚を食べません。昔はvegetarian の数はもっと多かったですが、国際化の影響でだんだん減っています。
インド人はどうやって必要な栄養素を取っているのでしょうか。
インド食にはいろいろな種類の豆やダールを使います。豆の皮をむいて半分にしたものをダールと呼びます。豆やダールはたんぱく質やミネラルに富んでいるうえに、消化吸収も早い。豆を10時間ぐらい水につけて(豆の種類によって時間は変わりますが)、少し塩だけ入れて、だいたい15分ぐらい圧力鍋で煮て食べても美味しいです。Uridダールは発酵のために使います。ドーサとイドリーにしか使いません。また、インド人の野菜や葉物の平均消費量も多いです。インドにしか栽培されていない野菜はいくつもあります。メーティは少し苦いですが、鉄分が多いです。ウォンデラガは脳にとてもいいといつも母に言われました。
それから、香辛料の使用はインド料理の特徴です。香辛料は、味付けだけでなく、漢方薬の役割も果たすので、少量用いると健康にとてもいいと研究でわかっています。風邪をひいたとき、せんじ薬を作って飲むとよく効きます。
胡椒は消化器病の治療に使われています。
シナモンは料理以外に、風邪の薬や消化剤として使われます。
アジュワインは下剤としてもつかわれています。
ショウガは関節炎の治療にも使われています。
特にタメーリックは酸化防止成分が豊富にあるので、毎日少し食べると、癌やアルツハイマー病を防ぐこともできるそうです。
インド食のもう一つの特徴は、粟を利用していろいろな料理を作ります。粟の値段は安いので、今まで農民や労働者がよく食べていましたが、最近、栄養価が高いので有名なクリケット選手や俳優まで主食として食べるようになりました。
粟の種類を見ましょう。
カルナータカ州では「ラーギ」という小さな黒い粟を材料として、お粥、ドーサ、スムージーやクッキーなどを作ります。焙煎したラーギの粉と砂糖をバターミルクに混ぜて、手軽にスムージーを作れます。
ラーギの栄養価をお米と比べてみましょう。
ラーギの栄養価
100g当たり
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ラーギ
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米
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カルシウム(mg)
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350
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28
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鉄分(mg)
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4
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0.8
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たんぱく質(g)
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8
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7
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ミネラル(g)
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2.7
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1
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エネルギー
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328kcal
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130kcal
|
ファイバー(g)
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3.6
|
0.3
|
お米に比べたら、ラーギの栄養価が高いです。それに、ラーギはグルテン、ナトリウム、コレステロールやでんぷん質を含んでいないので、健康食品として流行っています。
ラーギは黒い粟ですから、何を作っても黒くなります。だからラーギは見た目は悪いですが、いい点だけ見て、多くの人々が食べるようにしたら、体がよくなるでしょう。
南インドの主食は米ですが、北インドの主食は麦です。北インドでも南と同じように野菜と豆を使った料理をしますが、ご飯の代わりにチャパティやパラタを食べる人が多いです。同じ国で違う主食があるのはインドの特徴だといわれています。
インドの農業情報のある地図をお見せします。この地図に見るように、北インドでは小麦を多く作っていて、南ではお米を作るところが多いです。つまり、その地域によく作っていたものを食べていたと思います。
結論
もともとインド食は健康的で美味しいですが、最近はジャンクフードの普及の影響で心臓病や糖尿病が流行っています。みなさまもシンプルなインド食を試してみてください。
(スマ・アガラ)
サリー
サリーは5000年も前からインドに存在しており、リグ・ヴェーダ(紀元前230年)にもサリーについて記録があります。
サリーにはいろな種類があることを皆さん知っていますね。その生地も地方によって違いますが、そのうち一部だけご紹介させていただきます。
北インドのバンディニ(Bandini)。ラジャスタンとグジャラートが発祥地。晴れ着で、明るくてカラフルです。
ラクナウ(ウッタルプラデーシュ)のチカン。
バナラシ・サリー。起源地はバナレシ。ふちが特徴で、花嫁のサリーに欠かせない一品。
ベンガルコットンは西ベンガルの特徴的な木綿で、薄い。晴れ着としても日常着としても使える。
これも西ベンガルの生地で200年以上の歴史をもつ。絹の糸だけを使う。特徴は、ふちにラーマヤナやマハーバーラタのエピソードが描かれている。
タミルナードゥ州の独特な絹、Kanchuupuramシルクです。結婚式にはこれが決まりです。本物の金や銀の糸でできたBorderですから高いですよ。
Chennai Silks というサリーの店は、このサリーをGuiness World Record Book にのせてもらおうと努力していますが。このサリーはいくらだと思いますか? 50万ルピー、つまり10万ドルです。
マイスール・シルク。シンプルできれいな色が特徴で、安くても7000ルピーですよ。
ケララ州のMundu。白はその蒸し暑い気候にてきしています。
サリーの素材も着方も地方によって変わりますが、北と南ではなはだしく違います。
バラモンの結婚式のとき着るサリーをMadisarと言います。長さは9mで、普通のサリーの着方と違います。
毎日きるのは、200ルピーから1500ルピーの値段で買うことができる木綿と化学繊維のサリーで毎日の洗濯に適しています。
どうしてサリーなのか? ヒンドゥー教においては布を縫うのは不浄でした。
おへそは生命と想像力の源泉と信じられていたので、おへそをむき出しても大丈夫です。おへそや背中をみせても大丈夫です。
こんなにたくさんの金や銀の装飾品をどうやってもっているんですか? 子供が生まれて11日から3ヶ月までの間に、名前をつける行事をおこないます。そのとき金のイアリング、ネックレス、腕輪などをおじいさんおばあさんにかってもらいます。私の娘の1歳の誕生日のお祝いにも、祖父母からネックレスと腕輪とイエアリングをもらいました。
タミルナードゥ州ではTemple Jewelleryが特徴です。ケララ州は金が大事ですが、カルナータカもアンドラと同じく金と宝石です。アンドラ州はタミル州と同じくTemple jewelleryと金でできた宝飾が特色です。
結婚した女性の印として使われている宝飾は、首にするMangalsutra (Thali)、鼻のピアスとイアリング。
Mangalsutraは夫婦の切っても切れない関係を示します。
体中のエネルギーは額の真ん中、つまり眉毛の間のところからでてしまうのです。そのエネルギーを保つために、そこにBindiをつけます。特に、結婚した女性の印は赤いBindiです。
耳や左鼻をピアスすることによって、出産は容易になるそうです。インドでは紀元前から今までピアスすることが続いています。
(ショバナ・クリシュナムルティ)
セルワーカミーズ
セルワーカミーズは、もともとはペルシヤの服で、ムガルによって伝来した着ものです。ムガル皇帝の服で、男性と女性に愛用されていました。今は普通に女性の服となっていますが、ちょっと違った形で晴れ着として(結婚式、祭りなどのとき)男性も着ています。
セルワーカミーズには上の部分、下の部分、それからドゥパッタの三つがセットとなっています。下の部分ですが、だぶだぶしたものとぴったりしたものがあって、だぶだぶなのをセルワー、ぴったりなのをチューリダーといいます。どっちもドゥパッタをしますが、そのドゥパッタの仕方がいろいろあります。ドゥパッタが不便だといってしない人がふえていますが、よく考えるとドゥパッタはとても便利なものですよ。インドは日ざしがつよくて、日焼けから顔を守るためや、大気汚染から口をまもるために、ドゥパッタが使えますし、急に雨が降り出したら、助けてくれます。ドゥパッタは長いので、自分だけじゃなく、いっしょにいる友達や赤ちゃんを助けてあげることもできますね。
下の部分についてです。インドの暑さのため、特に今の時期はだぶだぶしたサルワーはとても楽です。サルワーにプリーツがものすごくたくさんあるものをパティヤーラといいます。パティヤーラはある町の名前ですが、そこのスタイルといういみです。パティヤーラは薄くてなめらかな布でできています。普通に着るものは、プリーツを少なくしたものです。
下の部分がぴったりしたものはチュリダーといいますが、その上の部分は、短いのも、長いのもあります。短いなら幅が広くないトップをきます。また、プリーツのある長いトップ、アナルカリーというスタイルのものもあります。インドでは、サルワーのファッションといえば、トップの長さや幅、袖の長さ、それから首のデザインが変わることです。最近は短いトップのファッションがはやっています。
首のデザインですが、襟のあるネックだとドゥパッタをしない、開いたネックだとドゥパッタをするのが普通です。
サルワーを作ってもらうのはたいへんだと思われたら、最近はやっている便利なものがあります。レギンスといいます。これは、いろんな色のものが売っているから、好きなクルターを買って、それにあわせたレギンスを買うこともできます。セットで買わなくてもいいですが、黒のレギンスはいろいろなものに合って便利です。
今の若者はインド風の服と西洋風な服を組み合わせてきています。ジーンズとクルティスのスタイルははやっています。インドにいる日本人の方にもこのスタイルが好まれているらしいです。
サルワーやクルティスといっしょにするアクセサリーは、前見たよりシンプルなものです。銀やプラチナのものを使う人もいれば、もっと軽くて安いテラコッタのアクセサリーを好む人もいます。
インドの食べ物や服はインドの気候に合っているものですから、インドにいるときぜひここの食べ物を味わったり、インドの服を着てみたりしてください。今日のプレセンテーションがそのためにみなさまの役に立てたら、嬉しくぞんじます。
(スシーラ・メノン)
(このようなインド文化紹介の催しを毎月1回行なう予定です。インドを知ることができて日本人も得、日本語の練習ができてインド人も得、双方一両得となれば。)
日本語を習い始めた時
ギータ・ラグラーム
大学に入る前に、日本会社で働いている友達から、日本人はいっしょうけんめい働くとか、謙虚だとか、いろいろな意見を聞きましたが、大学に入ったあと、本当にその経験をしたばかりでなく、インドと日本のいろいろな違った習慣も知りました。
たとえば、日本では子どもが16歳でアルバイトをするのはふつうですね。一方私の国では、だいたいの人は教育期間が終わった後ではじめて仕事をします。インドの両親にとって、教育をうけている間に子どもにアルバイトさせるのは恥ずかしいようです。「お父さんにはお金がある。アルバイトの必要はない」と言う人は多いです。
次に、挨拶のしかたです。日本語の先生は授業で丁寧語とか尊敬語とかいろいろな表現を教えてくれました。インド人はそのような挨拶の言葉をあまり使いませんから、インド人には覚えにくいと思います。私もいろいろな表現を覚えるのはいまも難しいです。
日本語を習いはじめた時の話です。ジャパンハッバの最後に、みんなお互いに「お疲れさまでした」と言いました。その表現を言いたかったので、私も友達に「お疲れました」と言ってしまいました。友達は笑いました。今少しずつ勉強しています。
漢字を習ったとき、漢字はとても難しいと思いました。いくら勉強してもすぐ忘れてしまいました。嫌だた思っていました。今も難しいですが、今はとてもおもしろいと感じします。漢字のロジックがわかるようになったからだと思います。
それから、インド人はいつも直接的な言葉を使って話します。たぶん日本人が始めて聞いたら、異様で不敵な表現のように思うかもしれません。
たとえば、日本人がバンガロール大学へ行きたくて道が分からないとき、何と言いますか?「バンガロール大学へ行きたいんですが…」と言って止めますね。日本人ならその文章の後ろの感じを良く分って返事をします。しかしそのようにインド人に聞いたら、インド人は「行きたかったら行ってくださいね。どうして私に言っているのかしら…?」と考えます。
私の経験についてどう思いますか? 言ってください。みなさんもそのようにいろいろなおもしろい経験をしているかもしれません。そうだったらこのブログに投稿してください。
弁才天学芸祭 Saraswathi Academic Festivalのご案内
4月28日(土)14:00
サラスヴァティ賛歌
日印楽器演奏 ヴィーナ:シュリーヴィディヤ、尺八:秦 智
詩吟:秦 智、詩朗読:シュリーヴィディヤ
短歌・俳句奉納
落語「水がめ割り」
研究発表「南インドと日本の関係」
(MA課程生:スシーラ、スマ、アラティ、ショバナ)
だるま・桟留織・カレー・ヴィシュヴェシュワラヤ・絹工場・タミル語日本語同系説
講演 加賀谷 忠夫「インドと私」(仮題)
日印修交60周年記念作文コンクール「インドと日本の絆」結果発表・表彰
・奉納短歌・俳句・川柳募集
南無妙音サラスヴァアティーおん神にわがへぼ歌を捧げたてまつる
上達を祈願して、短歌・俳句を弁才天/サラスヴァティに奉納しませんか。インド人から川柳はたくさん集まりました。たとえば、
結婚の 前は恋人 あとは敵 (LM)
うつくしい 雨の音楽 つゆの日々 (ShG)
ランゴリ
ランゴリはインドの伝統です。インド人が言う64の芸術のうちのひとつはランゴリです。家の前に手で米の粉を使って、自分のイマジネーションで絵を描くことです。
昔々、家の前を牛糞を使った水で掃除して、その上にランゴリをしていました。どうして牛糞を使いましたか? だれかご存知ですか? 二つの理由があります。ひとつは牛糞は消毒剤であって、これを使ったら家の外にあるウイルス、バクテリアなどは死んでしまうと言っていました。ふたつめは、米の粉は白いから、牛糞の上に書いたらはっきり見えるからです。
ランゴリは何種類もあります。ひとつは自由に書くものです。ひとつは、編み点を書いて、この点をつなぐものです。花を使ってデサインのようにするものもあります。これはケララの伝統です。お祭りのとき、いろいろな色を使ってランゴリを書きます。
ランゴリをかくと、ありや鳥のための食べ物にもなります。インド人は、ありや鳥に食べ物をあげて、そのあと自分が食べたらいいと思っています。だから、朝早く起きて、家の前を掃除して、女の人がランゴリを描きます。そうすると、家の中に神様がよろこんで入ってくるといわれています。このようなランゴリは、家の前を明るくするとともに、人々の心も明るくします。 (レヴァティ)
ピースボートの一行を歓迎するためにランゴリを描く