AGP日本語通信 第10号 (2012年9月号)
<インド文化講座・3>
インドの住居
スマ・アガラ
このビルをどこかで見たことがありますか。この大豪邸はの会リライアンス・インダストリーズの会長であるムケシュアンバニの家です。27階のこのビルは4万平方フィートの住居スペース、168台を収容することができる巨大パーキング、その上にあるロビーには、9台のエレベーターがあり、建築費は約840億円です。
インドは貧富の差が大きいので、世界で一番の豪邸からとても貧しい人々が暮らす小屋まで、いろいろ見られます。
大都市・町・村のさまざまな住居
大都市
皆さんが毎日見ている大都市の住居は、町と村とではだいぶ違います。
大都市には以下のような住居が見られます。
ゲーティッド・コミュニティー:
安全を確保して周囲をゲートとフェンスで囲った普通より広い一戸建ての住宅地のことです。デヴェラパー会社は私道、電気、上水道、下水道完備、公園、スポーツクラブなどのような施設を作り、土地を個人に売ることもあれば、一戸建てを売ることもあります。ゲーテッド・コミュニティーでは、ほとんどの家が4LDK・5LDKで3000平方フィートぐらいの広さです。このような住宅地を作るためにとても広い土地が必要なので、町の中心から外れたところにできています。
ゲーティッド・コミュニティーはムンバイ、チェンナイやデリーにはあまりありませんが、バンガロール、ハイデラバードやカルカッタにはたくさんできています。
バンガロールでは、アウターリングロード、国際空港のあたりやサッジャプラロードにたくさんのゲーティッド・コミュニティーができています。
バンガロールでいちばん初めにできたゲーティッド・コミュニティーはホワイトフィールドにあるパームメドスで、今もいちばん高級なゲーティッド・コミュニティーとなっています。
マンション:
大都市の人口増加に伴って集合住宅の数も増えました。マンションにはプール・スポーツクラブなどの施設があります。2LDK・3LDKのマンションが普通で、1500平方フィートぐらいの広さです。町の中心からはずれたところに限らず、中心地にもできています。
高層マンションの数はムンバイがいちばん多いし、値段もいちばん高いです。次はニューデリ、バンガロール、チェンナイとなっています。
バンガロールでいちばん高いマンションはどれでしょうか。
「Residences at UB city」は 平方フィートあたり33,000ルピーで、バンガロールの一番高いマンションです。ブリゲード、サラルプリア、ショバー、マンティリ、DLF,L&T, ラヘジャ、プレスティージュなどがインドの有名なビルドルになっています。
一戸建て:
ひと昔前には、バンガロールや他の大都市にも一戸建てが多かったですが、最近は階数を増やして借家にするようになっています。
新しい一戸建てを建てるために土地が個人や政府から買えるようになっています。どの町でも、土地の値段は場所によってだいぶ違います。
バンガロールは政治家や映画俳優が暮らすクマーラパルクやサダーシワナガルは1平方フィートあたり15,000ルピーで、バンガロールのもっとも高い住宅地となっています。
バンガロールで土地値段は1990年代から最近まで急騰(きゅうとう)して来ましたが、不況のときはあまり伸びていません。
アパート:
かつては一戸建てしかできないような土地の広さに、10戸ほど入るアパートを建てるのは普通です。スポーツクラブなどのような施設はほとんどありません。
長屋型式共同住宅:
5戸ほどが連続していて、トイレや水道が共同、屋根にファイバーガラスを使用している借家です。給水は朝数時間だけなので、翌朝まで必要な水をためておかなければなりません。
個人宅の使用人やオートの運転手などが、このような家を借りているのが普通です。月家賃は2000ルピーぐらいになります。
スラム:
インドので約5%の人口はスラムに住んでいます。スラムはムンバイがもっとも多くて、バンガロールはもっとも番少ないです。電気や水道があるのは普通ですが、トイレがほとんどないのでとても非衛生的な状態です。
町
マイソールのような町では、ゲーテッドコミュニティーやマンションのような集合住宅はとても少ないです。600平方フィートから8,000平方フィートまでいろいろな広さの土地を個人や政府から買うことができるので、中間層や富裕層は自分の財産に合う土地を買って家を建てるのが普通です。
中下層の人々はアパートや長屋型式共同住宅を借りて住みます。貧困層はスラムに住みます。
村
インドは約65%の人口は農家です。農村では、大半の農家は先祖伝来の土地にモルタルやわら、タイルで自分で家を建てます。だいたい自然界にあるものを使って家を建てるので、あまりお金はかかりません。
家を購入する
私の両親の世代は、だいたい四十代で家を買っていましたが、最近はITブームで、いろいろな企業に働いている人々の給料もだんだん伸びているし、銀行から簡単にローンを組むこともできるので、三十代のはじめごろに家を購入する人が多いです。
普通のサラリーマンは年収の6倍のローンを組むことができ、利息は10.5%となっています。
一戸建てやマンションやアパートを購入する場合は、土地開発業者や建築会社にお金を払ったあと、市登録事務所で家を自分の名前にしてもらいます。
また、町や大都市に家を建てる場合は、まず建築業者に設計してもらってから、市役所から許可を得る必要があります。 敷地面積に対する建築面積の割合は土地の広さによって違います。設計が規制に合っていない場合は許可がもらえません。
許可をもらった後、建築業者が労働者を雇って家を建ててもらいます。3000平方フィートの家を建てるにはだいたい一年ぐらいかかります。
ワーストゥ(風水)
インドの風水はワーストゥと呼ばれています。ワーストゥシャーストラには昔のヒンズー教の建物に関する決まりごとが書かれています。
どの建物でも、自然界にある太陽エネルギー、月のエネルギー、風カ、地球の磁力、火から発生する熱エネルギーを調和させることで、健康的でポジティブで活力のある生活を過ごすことができるとインド人は昔から信じています。
ワーストゥシャーストラによると、家の玄関は東や北、主人の寝室は家の南西角、台所は東南角、お祈りの部屋は北東角や北や東にあるとよいと言われています。
ワーストゥシャーストラに合った家は家賃も少し高いし売りやすいので、あまり信じていない人もだいたいワーストゥに合った家を建てるようにしています。
土地や家は大きな財産
町や大都市では土地の値段がだんだん上がっているので、いい投資だし、子供にとっていい財産にもなるので、人々はよく土地や家を購入しています。
結論
結論として言いたいのは、インドには豪邸に住んでいる人もいれば、小さな小屋に住んでいる人もいます。皆、自分はインド人という考えを持っているのがインドの特徴ではないかと思います。
木、それとも植木鉢(うえきばち)?
ギータ・ラグラム
みなさん、ちょっと想像(そうぞう)してみてください。祖先(そせん)からもらった家や土地、たからくじであたったー億円(いちおくえん)、お金もちのご主人、日本製(せい)の車、レストランでの食事、高い服(ふく)、うわあ! しあわせですね! でも、ちょっとまってください。しあわせというのはぜいたくに人生をおくることですか? 車と家をすこしどかして考えてみませんか?
わたしのゆめは、教師(きょうし)になることでした。しかし、いなかの出身(しゅっしん)なので、学生のとき18歳(さい)で結婚(けっこん)しました。結婚後は、主人からもらったお金をつかって、気楽(きらく)にのんびりくらしていました。
勉強に対(たい)する興味(きょうみ)も少しずつなくなってきていたので、その年の試験(しけん)にも失敗(しっぱい)してしまいました。でも、いつも「追試(ついし)は、わたしのような人のためにあるのよ!!」と言って、気にしないでわらっていました。
みなさんおわかりですね。そうです。人生について、ぜんぜん真剣(しんけん)に考えていませんでした。人生はバラ色でした。
しかしみなさん、バラにもとげがありますね。
主人が出張中(しゅっちょうちゅう)だったときの話です。
ある日、わたしの胃(い)をはげしい痛(いた)みがおそったのです。病院にいったら、先生も看護士(かんごし)さんも、みんな英語でペラペラ話しているの聞いて、「英語! ぜんぜんわからない。痛みはだいじょうぶだけど、英語にがまんできない!!」とこわくなってしまいました。
そんなわたしを見て、先生はわたしに言いました。
「ギータさん、いま何をしているの?」
「結婚したので、勉強をやめてしまったんです。」
「ええ。そうなの。わたしもギータさんのようにはやく結婚して、すぐ妊娠(にんしん)もしたの。ある日、妊娠中に家族をつれて旅行していたとき、じつは、のっていたバスが事故(じこ)にあって、主人が死(し)んでしまったの。それで、わたしは主人の家からおいだされてしまいました。ほんとうにつらかった。でもね、自信(じしん)をなくさずに、勉強をつづけて、医者になったの。」
わたしはびっくりしました。先生は話しつづけました。
「人生はたくさんねじれているものです。だから、女性(じょせい)はいつも、花の植木鉢じゃなくて、木のようにつよくなって、ほかの人もまもれるようになったほうがいいんじゃないかしら。」
まえは、わたしは主人からそだててもらった植木鉢だったと気づきました。先生のお話をきっかけに、わたしのあたらしい人生がはじまりました。大学を卒業(そつぎょう)して、にがてだった英語の修士(しゅうし)をとって、ゆめだった教師になりました。それに、日本語の勉強もはじめました。いま、木のようになろうとがんばっています。
しあわせというのは、ぜいたくや財産(ざいさん)ではなく、だれにもたよらないで、自分で小さいことでも達成(たっせい)することではないでしょうか。
今年も弁論大会(べんろんたいかい)の季節がやってきました。これは2011年にデリーの全インド弁論大会ジュニアの部で優勝したギータさんのスピーチです。これからスピーチする人は参考にしてください。バンガロール地区日本語弁論大会は11月3日(土)です。
8月26日(日)、KOYO Meetupに日印学生会議やインターンシップの日本人学生たちが参加して、ディベートやジェスチャーゲームなどにぎやかに催しが行なわれました。そのときの写真コンテストで1位と2位だった写真を紹介します。
キショールさん撮影
中村さん撮影
MA Japanese Course. Centre for Global Languages, Bangalore University.
P.K. Block, Palace Road, Bangalore - 560009, India